[相談]
私は、社会福祉法人で経理を担当しています。
私が勤務する法人(消費税課税事業者)は各種の障害者福祉サービス事業を行っていますが、その中には、市町村から委託を受けて行う障害者相談支援事業(障害者総合支援法における地域生活支援事業として実施されるもの)があります。
上記の(市町村が行う)相談支援事業について市町村から当法人が受け取っている委託料については、これまで消費税は「非課税」という認識でおり、市町村からも同様の説明を受けていたのですが、このたび、市町村の公表資料により、消費税は実際には非課税ではなく、課税対象であることを知りました。
そこでお聞きしたいのですが、過年度において当法人が受け取っていた上記事業の委託料にかかる消費税については、どのような対応を取るべきでしょうか。教えてください。
[回答]
ご相談の場合、過年度において受け取っていた委託料について、消費税の修正申告が必要になるものと考えられます。詳細は下記解説をご参照ください。
[解説]
消費税法上、国内において行われる資産の譲渡等のうち、社会福祉法に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等には、原則として、消費税を課さないと定められています。
上記の社会福祉事業とは、社会福祉法に規定する「第一種社会福祉事業」および「第二種社会福祉事業」をいい、具体的には、「第一種社会福祉事業」には障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に規定する障害者支援施設を経営する事業が該当し、また、「第二種社会福祉事業」には障害者総合支援法に規定する障害福祉サービス事業、一般相談支援事業、特定相談支援事業又は移動支援事業及び同法に規定する地域活動支援センター又は福祉ホームを経営する事業が、それぞれ含まれています。
障害者総合支援法に規定する相談支援事業は、大きく分けて、@(障害者に)個別給付で提供される相談支援(一般相談支援事業、特定相談支援事業)と、A地域生活支援事業(障害者総合支援法に位置付けられている統合補助金で、事業の実施主体である市町村等が、地域の特性や利用者の状況に応じて柔軟に実施することにより、効果的・効率的な事業実施が可能とされている事業。なお、この事業は、適切な一般相談支援事業者又は特定相談支援事業者へ委託可能と定められています)に区分されています。
今回のご相談の障害者相談支援事業(障害者総合支援法における地域生活支援事業として行われる障害者相談支援事業)については、ここまで述べた通り、上記2.@の一般相談支援事業および特定相談支援事業とは異なるもの(地域生活支援事業)であることから、上記1.の消費税法上の社会福祉事業には該当しないこととなります。
したがって、ご相談の市町村から委託を受けて行う障害者相談支援事業(障害者総合支援法における地域生活支援事業として実施されるもの)について収受する委託料は、消費税の課税対象となります。
今回のご相談の場合のように、消費税の課税事業者が、消費税法上非課税とならない収入(売上げ)を非課税として消費税申告における課税売上高に含めていなかった場合には、消費税の修正申告が必要となります。
なお、修正申告により発生した加算税や延滞税については、今回のご相談の場合のように市町村からの説明が誤っていた場合であっても、国税庁によれば、「消費税法を解釈適用する行政機関ではない市町村が、自らの判断により、消費税法の取扱いについて納税者に対し誤った指導を行い、納税者の方がその誤った指導を信頼したとしても、「納税者の責めに帰すべき事由」が無いとまでは言えないことから、免除することは困難」とされていますので、この点にもご留意ください。
[参考]
消法6、別表第一、消基通6-7-5、6-7-9、社会福祉法2、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律5、51の14、51の17、77、77の2、国税庁質疑応答事例「障害者相談支援事業を受託した場合の消費税の取扱い」、国税庁「障害者相談支援事業等に関連するお問合せ(Q&A)」(令和6年4月)、国税庁消費税室「「障害者相談支援事業」に係る消費税等の取扱い」(令和6年4月26日)、厚生労働省事務連絡「障害者相談支援事業等に係る社会福祉法上の取扱い等について」(令和5年10月4日)、厚生労働省「障害者相談支援事業に関する自治体説明会」(令和6年4月26日)など
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